Web広告の運用を検討する際、多くの企業が頭を悩ませるのが「どの広告をまず始めるのか」です。その中でもディスプレイ広告とリスティング広告の両者は運用型広告の代表格ですが、その特性や効果は大きく異なります。本記事では、2025年の業界データをもとに、両広告の違いと効果的な使い分け方を徹底解説します。
目次
Web広告の基本
デジタルマーケティングが主流となった現在、Web広告は企業の売上に直結する重要な施策です。特に運用型広告は、予算やターゲティングを日々調整できる柔軟性から、中小企業から大企業まで幅広く活用されています。
運用型広告の中でも、リスティング広告とディスプレイ広告は「二本柱」とも言える存在です。しかし、それぞれの特性を理解せずに運用を始めると、予算を無駄にしたり、期待する成果が得られなかったりする可能性があります。まずは両者の基本的な仕組みから見ていきましょう。
リスティング広告とは?
リスティング広告は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで、ユーザーが特定のキーワードを検索した際に表示される広告です。検索結果ページの上部や下部に「スポンサー」「広告」といった表記とともに掲載されます。
仕組みの特徴
- ユーザーの検索キーワードに連動して表示
- クリック課金制(CPC)で費用が発生
- オークション形式で表示順位が決定
- テキスト中心の広告フォーマット
主要プラットフォームはGoogle広告とYahoo!広告で、両者を併用することで日本のほぼすべての検索ユーザーにリーチできます。リスティング広告の最大の特徴は、「今まさに探している人」に直接アプローチできる点です。
ディスプレイ広告とは?
ディスプレイ広告は、Webサイトやアプリ内の広告枠に表示される、画像や動画を使ったビジュアル広告です。ニュースサイトやブログ、動画サイトなど、ユーザーがコンテンツを閲覧している際に目に触れます。
仕組みの特徴
- Webサイトやアプリの広告枠に表示
- 画像・動画・テキストを組み合わせた多様なフォーマット
- ユーザーの興味関心や行動履歴に基づいて配信
- クリック課金(CPC)またはインプレッション課金(CPM)
主要ネットワークは、Googleディスプレイネットワーク(GDN)とYahoo!ディスプレイ広告(YDA)です。数百万のWebサイトやアプリに広告を配信でき、幅広い潜在顧客にリーチできます。
両者の5つの主要な違い
1. 表示場所の違い
リスティング広告は検索結果ページに限定されるのに対し、ディスプレイ広告は無数のWebサイトやアプリに表示されます。この違いは、ユーザーとの接点のタイミングに大きく影響します。
2. ターゲット層の違い
リスティング広告は「顕在層」、つまりすでに商品やサービスを探している購買意欲の高いユーザーにアプローチします。一方、ディスプレイ広告は「潜在層」、まだ明確なニーズを自覚していないユーザーに認知を広げる役割を果たします。
3. 広告フォーマットの違い
リスティング広告は主にテキストで構成され、見出しと説明文で商品の魅力を伝えます。ディスプレイ広告は画像や動画を活用でき、視覚的なインパクトでブランドイメージを訴求できます。
4. クリック率(CTR)の違い
2025年のデータによると、リスティング広告の平均CTRは約3.17%、ディスプレイ広告は約0.46%です。リスティング広告のCTRが高いのは、検索意図に合致した広告が表示されるためです。ただし、CTRが低いからといってディスプレイ広告の効果が劣るわけではありません。目的が異なるためです。
5. クリック単価(CPC)の違い
一般的に、リスティング広告のクリック単価は100円〜1,000円以上と幅広く、競合の多いキーワードでは高騰する傾向があります。一方、ディスプレイ広告のCPCは50円〜200円程度と比較的安価です。業界別に見ると、法律関係では1,000円を超えることもあれば、Eコマース業界では100円〜500円が相場となっています。
リスティング広告のメリット・デメリット
メリット
購買意欲の高いユーザーにアプローチ 検索行動そのものが明確な購買意図を示しているため、コンバージョンに直結しやすいのが最大の強みです。「東京 税理士 おすすめ」と検索するユーザーは、まさに今、税理士を探している可能性が高いでしょう。
即効性が高い 広告を出稿した瞬間から、検索結果に表示され始めます。SEO対策のように数ヶ月待つ必要がなく、短期間で成果を出したい場合に最適です。
費用対効果を測定しやすい どのキーワードが何件のコンバージョンを生んだか、詳細なデータで把握できます。効果の高いキーワードに予算を集中させることで、ROIを最大化できます。
デメリット
競合が多いとクリック単価が高騰 人気のキーワードでは、多数の企業が入札するため、クリック単価が数千円に達することもあります。特に法律、金融、不動産などの業界では、広告費が膨らみやすい傾向があります。
潜在顧客へのリーチが限定的 検索しているユーザーにしかアプローチできないため、まだニーズを自覚していない潜在顧客には届きません。新商品の認知拡大には不向きです。
ディスプレイ広告のメリット・デメリット
メリット
潜在顧客への認知拡大 まだ商品を知らない、あるいは必要性に気づいていない層に、広くリーチできます。認知度向上やブランディングに効果を発揮します。
ビジュアルでブランディング効果 画像や動画を使った訴求により、商品の魅力やブランドイメージを視覚的に伝えられます。テキストだけでは伝わりにくい雰囲気や世界観を表現できます。
クリック単価が比較的安価 リスティング広告と比べてCPCが低いため、限られた予算でも多くのユーザーにアプローチできます。ブランド認知を広げたい初期段階では、コストパフォーマンスに優れています。
リターゲティングで再アプローチ可能 一度サイトを訪問したユーザーに対して、ディスプレイ広告を継続的に表示できます。購入を迷っているユーザーに思い出してもらい、コンバージョンを後押しする効果があります。リターゲティング広告は、他の広告手法に比べてコンバージョン率が高い傾向にあります。
デメリット
コンバージョン率が低めの傾向 興味関心の段階でアプローチするため、即座に購入や問い合わせにつながる確率はリスティング広告より低くなります。長期的な視点での運用が必要です。
広告クリエイティブの制作が必要 効果的なビジュアル広告を作成するには、デザインスキルや制作リソースが求められます。外注する場合は別途費用が発生します。
目的別の使い分け戦略
リスティング広告が向いているケース
商品・サービスの購入を促進したい 今すぐ顧客が欲しい、売上を伸ばしたいという明確な目標がある場合、リスティング広告が最適です。検索ユーザーの購買意欲は高く、適切なキーワード選定と広告文があれば、高いコンバージョン率が期待できます。
短期間で成果を出したい キャンペーン期間が限られている、四半期の目標達成が急務など、スピードが求められる場合に有効です。
明確な検索ニーズがある商材 「引越し業者」「英会話スクール」「クラウド会計ソフト」など、ユーザーが能動的に検索するタイプの商材に適しています。
ディスプレイ広告が向いているケース
ブランド認知度を高めたい 新規ブランドの立ち上げや、リブランディング時には、まず「知ってもらう」ことが重要です。ディスプレイ広告の広いリーチ力が効果を発揮します。
新商品・新サービスを周知したい まだ検索されていない新しい商品カテゴリーは、リスティング広告では訴求できません。ディスプレイ広告で潜在顧客に情報を届けることが先決です。
潜在顧客を育成したい すぐに購入には至らなくても、将来的な顧客候補を育てたい場合、ディスプレイ広告で継続的に接触を保つことができます。
併用戦略のススメ
実は、最も効果的なのは両者を組み合わせる戦略です。カスタマージャーニーの各段階でそれぞれの広告が異なる役割を果たします。
予算配分の目安(70:30の法則) 一般的には、リスティング広告に70%、ディスプレイ広告に30%の予算配分から始めることが推奨されます。ただし、ブランド認知が課題の場合は比率を逆転させることもあります。運用データを見ながら、最適な配分を見つけていきましょう。
カスタマージャーニーに応じた活用 認知段階ではディスプレイ広告で幅広くアプローチし、検討段階でリスティング広告が受け皿となる。購入後はディスプレイ広告のリターゲティングでリピートを促す。このような一連の流れを設計することで、広告効果は飛躍的に高まります。
リターゲティングとの組み合わせ ディスプレイ広告でサイトに訪問したユーザーが、後日関連キーワードで検索した際にリスティング広告が表示される。逆に、リスティング広告経由の訪問者に、ディスプレイ広告でリターゲティングする。この相乗効果により、コンバージョン率は大幅に向上します。
効果的な運用のポイント
リスティング広告の運用ポイント
キーワード選定の重要性 成果の8割はキーワード選定で決まると言っても過言ではありません。検索ボリューム、競合性、購買意欲の高さのバランスを見極めましょう。ロングテールキーワード(具体的で詳細な検索語)は、競合が少なくコンバージョン率が高い傾向があります。
広告文の最適化 限られた文字数で、ユーザーの検索意図に応える明確なメッセージを伝えることが重要です。数値や具体的なメリットを盛り込み、行動を促す言葉(CTA)を必ず含めましょう。
除外キーワードの設定 無駄なクリックを防ぐため、自社の商材と関連性の低いキーワードを除外設定することが必須です。例えば、有料サービスを提供しているのに「無料」で検索したユーザーをクリックさせても、コンバージョンにはつながりません。
ディスプレイ広告の運用ポイント
ターゲティング設定の精度向上 年齢、性別、興味関心、閲覧履歴など、多様なターゲティングオプションを活用して、届けたい人に確実に広告を表示させましょう。ターゲティングが曖昧だと、広告費が無駄になります。
クリエイティブのA/Bテスト 複数のデザインパターンを用意し、どれが最も効果的かをテストします。画像、キャッチコピー、色使い、CTAボタンの位置など、細かな要素がクリック率に大きく影響します。
配信面の選定と除外 ブランドイメージに合わないサイトや、効果の低い配信面は除外設定しましょう。どのサイトに広告が表示されているかを定期的にチェックすることが重要です。
予算と費用相場
Web広告を始める際、最も気になるのが予算です。2025年の最新データをもとに、現実的な費用相場をご紹介します。
リスティング広告の費用相場 月額20万円〜50万円が一般的な相場です。小規模事業者は月10万円程度から始めることもできますが、十分なデータを収集し効果を検証するには、最低でも月20万円は確保したいところです。代理店に依頼する場合は、広告費の10〜30%程度の手数料が追加で発生します。
ディスプレイ広告の費用相場 月額10万円〜30万円が目安です。クリック単価が低いため、リスティング広告より少額から始められます。ただし、クリエイティブ制作費が別途必要になる点を忘れないようにしましょう。
初期予算の設定方法 まずは目標とする獲得件数(コンバージョン数)を設定します。例えば、月10件の問い合わせを獲得したい場合、想定コンバージョン率が2%なら500クリックが必要です。クリック単価が200円なら、広告費は10万円となります。この計算式を基本に、現実的な予算を組みましょう。
まとめ
リスティング広告とディスプレイ広告は、それぞれ異なる強みを持つ重要なマーケティングツールです。リスティング広告は「今すぐ客」を獲得し、ディスプレイ広告は「これから客」を育てる。この役割分担を理解し、両者を戦略的に組み合わせることで、広告効果は最大化されます。
最初の一歩として まずはリスティング広告から始め、コンバージョンデータを蓄積し、その後、リターゲティングを含むディスプレイ広告を追加し、相乗効果を狙う。この順序が、多くの企業にとって現実的で効果的です。
とはいえ広告運用には専門知識と継続的な時間が必要です。社内リソースが限られている場合や、より高度な戦略を実行したい場合は、広告代理店やコンサルタントへの依頼も検討しましょう。初期投資は増えますが、長期的には費用対効果の向上につながることも多いのです。
Web広告の世界は日々進化しています。最新のトレンドやアルゴリズムの変化に対応しながら、自社に最適な広告戦略を構築していきましょう。
