Webデザインにおいて「ブランドらしさ」をどう表現するかは、ユーザーとの信頼関係を築くうえで重要な要素です。中でも「トーン&マナー(トンマナ)」の設計は、ビジュアルやコピーを通じてブランドの世界観を伝えるための大切なルールです。
本記事では、トンマナとは何か?どう作り、どう活かせばよいのか?を、実例を交えながらわかりやすく解説します。
目次
トーン&マナーとは何か?ブランドとの関係性を理解する
デザインにおける「トーン&マナー(トンマナ)」とは、視覚表現や言語表現を通じて、ブランドの個性や価値観を一貫して伝えるためのルールや方針のことを指します。トーン(tone)は感情や印象、つまり「どんな雰囲気で伝えるか」を示し、マナー(manner)は表現の形式や態度、「どのような方法で伝えるか」に関わります。
たとえば、同じ内容でも、ポップで親しみやすいトンマナで表現すればカジュアルな印象になり、高級感を意識したトンマナなら洗練された印象になります。デザインの要素としては、色使い、フォント、写真やイラストのタッチ、レイアウトのバランスなどが含まれ、これらを統一して設計することで、ブランドの世界観をユーザーに明確に伝えることができます。
特にWebデザインでは、ユーザーが最初に接するブランドの顔となるため、トンマナの整合性が信頼感や安心感につながります。伝えたいブランド像やターゲットユーザーを明確にしたうえで、トンマナを丁寧に設計し、一貫して運用することが重要です。
ブランドイメージを視覚に落とし込む:色・フォント・レイアウトの選定
ブランドイメージを視覚に落とし込むのに大切なのは、ブランドの「コンセプト」や「ターゲット」を明確にすること。そこから、どんな色がブランドの雰囲気に合うのか、どのフォントがふさわしいのか、写真やイラストはどのようなタッチがよいかといった視覚的な要素を選定していきます。
たとえば、自然やサステナブルをテーマにしたブランドであれば、ナチュラルなグリーン系の色味や柔らかい質感の素材感を取り入れることで、ユーザーにやさしさや安心感を伝えることができます。また、フォントや余白の使い方も印象に大きく影響します。洗練されたブランドであれば、シンプルかつモダンなフォントや、余白を活かしたミニマルなデザインが適しています。
このように、視覚表現を通じてブランドの個性を明確に伝えることで、ユーザーとの信頼関係や共感を築くことができるのです。
言葉のトーン:コピーライティングで伝えるブランドの個性
コピーライティングは、ブランドの「声」とも言える重要な要素です。どれだけ優れたデザインであっても、言葉がブランドの個性とズレていれば、ユーザーに違和感を与え、信頼を損ねる可能性があります。
まず考えるべきは、ブランドが「誰に、何を、どのように伝えたいのか」です。たとえば、親しみやすさを重視するブランドであれば、やわらかい言い回しやカジュアルな言葉遣いを選びます。一方で、高級感や専門性を打ち出したい場合は、丁寧で洗練された表現が適しています。これにより、ユーザーはブランドに対して「安心できる」「信頼できる」「自分に合っている」と感じるようになります。
また、Webサイトや広告、SNS、メールマガジンなど、ユーザーと接触するすべてのタッチポイントで一貫した言葉のトーンを保つことが、ブランドの「人格」を育てる鍵になります。ブランドのトーンがぶれてしまうと、ユーザーの印象も曖昧になり、結果としてブランドの信頼性や魅力が薄れてしまいます。
さらに、コピーは情報を伝えるだけでなく、感情に訴える力も持っています。短くても心に残るフレーズや、ユーザーの悩みに寄り添う言葉は、共感や行動を引き出す力があります。だからこそ、単なる文章ではなく、ブランドの「らしさ」を言葉で表現する意識が求められるのです。
コピーライティングは、ブランドの“顔”をつくるもう一つのデザインです。ビジュアルと連動させながら、言葉によってブランドの個性を深く、印象的に届けていきましょう。
Webデザインにおけるトーン&マナーの成功事例
無印良品(MUJI)
トンマナの特徴:シンプル・ナチュラル・誠実
無印良品のWebサイトは、商品紹介からコピー、色使いに至るまで一貫して「無駄のない美しさ」を感じさせます。白背景にシンプルな文字と落ち着いた色味を使い、洗練された静けさを表現。コピーも過剰な宣伝はせず、商品の本質や素材へのこだわりを淡々と伝えるスタイルです。ブランドの価値観である「本質的な良さ」「余白の美」を見事に視覚化しています。
北欧、暮らしの道具店
トンマナの特徴:やさしさ・温もり・共感
暮らしに寄り添う商品を扱うこのサイトでは、全体的にあたたかみのある色合いと手書き風のフォント、柔らかい写真が特徴です。コンテンツも丁寧な文章で構成されており、ユーザーに「このブランドは私の暮らしに寄り添ってくれる」と思わせるトーンで統一されています。ブランドストーリーとデザイン、文章のトンマナが非常に高いレベルで噛み合っており、ファン層の厚さにもつながっています。
Apple(日本版サイト)
トンマナの特徴:革新性・洗練・機能美
Appleの日本向け公式サイトは、グローバルブランドの一環として設計されつつも、日本語コピーの精度が高く、ブランドの先進性や上質さをそのまま伝えています。黒や白を基調にしたミニマルなデザインと、精緻な商品画像、そして短くも力強いコピーが、Appleの「革新性」をしっかりと体現しています。
トンマナ成功の共通点
これらの事例に共通しているのは、「ブランドの世界観」を言葉・ビジュアル・レイアウトすべてで統一している点です。また、誰に届けたいのか、どんな感情を伝えたいのかを明確にし、それにふさわしいトーンで表現していることが、ユーザーの共感や信頼を得る要因となっています。
まとめ
ブランドを伝えるWebデザインにおいて、トーン&マナー(トンマナ)の設計と活用は欠かせない要素です。トンマナは、視覚や文章を通じてユーザーにブランドの世界観を伝える役割を果たします。色やフォント、写真のトーン、コピーの言葉遣いなど、細部に至るまで一貫性を持たせることで、ブランドの信頼性や親しみやすさが高まり、ユーザーの記憶に残る体験を提供することができます。
また、トンマナは単なるデザインのスタイルではなく、ブランドの価値やビジョンを視覚化・言語化する「伝える力」を持っています。ターゲットとなるユーザーや市場環境を理解し、ブランドの個性に合わせたトンマナを設計・運用することが、他社との差別化にもつながります。WebサイトやSNS、広告など、すべての接点でトンマナを統一し、長期的に運用することで、ブランドの強いアイデンティティが築かれていくのです。
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